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がんの痛みを解消する処方箋

がんの痛みを解消する処方箋
がんの痛みを解消する処方箋日本人の半数がかかる病気、がん。治療法などが紹介されることは多いですが、がんが引き起こす「痛み」についてあまり知られていません。
自らもがん闘病中の気鋭のジャーナリスト森省歩氏が、緩和ケアの現場から、痛みの仕組みや対処方法をサンデー毎日2019年11月17日号で報告しています。

現在の緩和医療は人々の「せめて苦痛なく逝きたい」という願いや要請に必ずしも応えるものとはなっていません。
確かに「緩和ケア(在宅緩和ケアも含めて)」や「看取り」などの言葉は広く知られるようになりました。
しかし、緩和ケアが標準がん治療の尽きた最末期患者の「送り込み先」として利用されていたり、結果としての看取りだけが独り歩きして「その人らしく生きるための支援」が抜け落ちていたりと、緩和医療の現場にはお寒い現実も少なからず横たわっていると森氏は述べています。
その結果、適切な緩和ケアが受けられないまま七転八倒の死を迎える患者も少なくないのが現状だそうです。
人生100年時代を迎え、今や「日本人の2人に1人ががんにかかり、3人に1人ががんで命を落とす」とされる時代です。
森氏の報告は「がんのホームドクター」として全国的にも極めてユニークな在宅緩和ケアを行っている「さくさべ坂通り診療所」(千葉市)の大岩孝司医師(72)らの先進的な取り組みを紹介したものです。


がんの痛みを解消する処方箋『がんの最後は痛くない』の著書もある大岩医師はまず、「理にかなった緩和ケアを受ければ、がんの終末期にいわゆる七転八倒の苦痛に襲われることなどあり得ない」と断言した上で、次のように指摘しています。

「実は、患者さんが『実際に感じる痛み』は身体的な『がんの痛み』が増幅されたものなのです。
患者さんが置かれている状況を想像してみてください。ただでさえ迫りくる死への不安や恐怖で圧し潰されそうになっているところに、『自分がこれまでに受けてきた治療は間違っていたのではないか』『周囲は自分のこの辛い気持ちをどうして理解してくれないのか』といった迷いや不満が次々と押し寄せてくるのです。
身体的な痛みは医療用麻薬などによって除去または緩和することができますが、私が『気がかり』と呼んでいる不安や恐怖、迷いや不満などによって増幅された痛みは、気がかりに対するケアなくして緩和、解消することはできないのです。
この痛みのメカニズムを理解しないまま、モルヒネだけに頼った緩和ケアを続けた結果、世に言う『七転八倒』が起こるのです。
そして、この七転八倒に断を下すべく、緩和ケアの最終局面で鎮静が多用されることになるのです。逆に言えば、理にかなった緩和ケアを実施すれば、七転八倒も起こらないし、鎮静も必要ないのです」と語っています。

では、がんの痛みを増幅させる気がかりはどうすれば解決されるのか。そこで必要になってくるのが、患者が実際に感じる痛みをトータルペインの視点から捉え、実際に感じる痛みを全人的ケアによって解消していくという考え方だそうです。
全人的ケアとは「身体面だけではなく、心理面や社会的立場なども含め、患者を全人格的に捉えて診るケア」ですが、大岩医師は全人的ケアを実際に行う際の要諦を「患者さんの語る言葉に基づいて気がかりを一つずつ相談しながら解消していくこと」と指摘し、大岩医師とともに在宅緩和ケアにあたっている鈴木喜代子看護師は「基本的には聞き役に回って患者さん主導に徹すること」と表現しています。

配信 Willmake143